読売新聞での紹介記事
●読売新聞 朝刊 2008年1月25日版
うつノート 回復めざして 第4回 「心は更地 安らぐ表現」
※カウンセラー相性も大切※
吉田恭子さん[仮名、27])は高校時代から、うつ症状で悩んでいた。2005年末には会社を退職。06年には、慢性的な軽いうつ病である「気分変調症」という診断を受けた。入院し、休養と薬物療法を受けたが、気持ちの平安はなかなか得られなかった。「元の私に戻りたい」という気持ちにとらわれていた。
治療の転機になったのは、カウンセリングだった。
「病気で何もかも失ってしまった。自分は空っぽ。魅力がないし、何の可能性もない。自分は『無』だと感じる」。
カウンセラーにそう話すと、
「自分を『更地』のように感じているのではないか」
と問いかけられたという。
「更地」という言葉を聞き、「更地だから何もないけど、どんな花を植えようと自由なんだ」という居心地のいいイメージがわいてきた。不安感や焦燥感が薄れた。
現在、うつ病の治療では、薬物療法が主流だ。しかし、心理療法を求める患者は多い。
古田さんは「フォーカシング」というカウンセリングの方法が性に合った。フォーカシングは、自分の実感に当て、言い表すことで、心を理解しようとする心理療法。
「更地」の心境でしぱらくすごしているうちに、元気になった吉田さんは昨年、週1回、派遣で事務の仕事を始め、週3回まで増やした。
しかし、作業の能率は落ちていた。気持ちに波があり、疲れやすい。
「以前のように仕事できない」
「自分は人から遅れてしまった」
というプレッシャーを感じて、気分も落ち込んだ。仕事は半年ほどでやめた。
それでも、以前とは違う。以前は休養していても、焦りや不安で心の中は嵐のようで、心は休めていなかった。カウンセリングによって、自分の感情を扱いやすくなり、休養中、平安を取り戻すことができるようになった」と吉田さん。現在は、ウォーオーキングをしたり、ジムに通ったりしながら、体力をつけ、生活リズムを整えることを大事にしている。
フォーカシングの専門家である関西大学教授、池見陽(いけみあきら)さんは、
「健康なときは、職場で嫌なことがあっても帰りの電車の中で忘れることができる。しかし、ストレスが強くなると、寝ても忘れられなくなる。カウンセラーとともに、自分の感情との距離のとり方の練習をすることが必要」
と話す。
「感情は本来、移り変わっていくもの。感情に名前をつけて、ちょっと距離をおいて観察してみる。すると、感情も変わってくるかもしれない」
吉田さんは、自分の焦燥感に「せっかち君」と名前をづけた。
「せっかち君が顔をのぞかせたな」と思ったらら、心の中でせっかち君と会話すると、せっかち君は引っ込むようになった。
池見さんは、
「薬と休養でよくなってきた段階で心理療法を併用するのは効果が期待できる。性格的な問題があるケースや、働き過ぎなどの生活状態の問題がある場合に、有効だと考えられる。療法よりもカウンセラーとの相性が重要だと思う。主治医に相談してほしい」
とアドバイスする。
******
この記事での池見先生のコメントについての更なる注釈を、池見先生ご自身が個人サイトで公開しておられます。こちらをご覧下さい。
この記事は、私が「湘南フォーカシング・カウンセリングルーム」時代に担当した事例です。
この記事に関して、私は直接取材を一切受けていません。
「私のうつノート」に感想を送っていたクライエントさんの方が取材の対象で、私の方がクライエントさんから、自分が取材に応じることについての承諾を打診されるという、思わぬ展開でした。
【追伸 09/08/15】
この時の記事は、その後本になった、「私のうつノート」(読売新聞生活情報部 編著)に、全文そのまま転載されていたことに、やっと気がつきました(p.122-4)。
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